研究初年度の平成17年度は、研究の基礎的データ収集を目的とする調査を中心に進めた。 8月〜9月に福島市上条1号墳の発掘調査を実施し、同古墳が6世紀後半に築造された墳長46mの前方後円墳であることをほぼ明らかにし得た。この規模は福島盆地最大で、東北でも第2位の後期古墳となり、調査成果は東北南部の古墳時代終末時の政治社会関係を検討するためのきわめて重要な情報となった。また、調査成果の整理と分析を17年度後半に進め、3月に中間報告を刊行した。 3月には須賀川市市野関稲荷神社古墳の測量調査を実施し、従来不明であった同古墳が墳長39mの前方後円墳であることなど、その実態を検討するための基礎材料とともに、各地域に分布する後期の有力古墳を比較分析するための大きな手がかりを得た。 また、東京国立博物館に所蔵されている福島県内の後期の重要古墳(福島市浜井場古墳群、須賀川市蝦夷穴古墳、いわき市大志田古墳)の出土遺物の調査を2月に行い、実測図作成・写真撮影等の資料化を図っている。 これらの調査に併行して、東京都、愛知県、鹿児島県、大韓民国等の古墳や博物館に対する現地調査を行い、あるいは関連学会に参加し、福島県域の後〜終末期古墳および初期官衙・寺院の特質の把握と明確化に努めた。 以上の成果の一部は、10月に福島県で開催された日本考古学協会福島大会のシンポジウム「7世紀の東日本-変革期の諸相-」において研究代表者が執筆した趣旨説明、および司会を担当した総合討論の中で発表している。 このほか、研究遂行上必要となる基本文献の収集を進め、測量用トータルステーションや大型プリンタ等を導入するなど、調査研究環境の整備と充実に努めた。
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