研究2年度目の平成18年度は、基礎的データの収集および初年度研究の継続発展を目的とする調査を中心に進めた。 8月〜9月に福島市上条1号墳の第2次発掘調査を実施し、昨年度実施の第1次発掘調査において未解明・未決の事項をほぼ明らかにし得た。すなわち、同古墳が6世紀後半に築造された墳長46mの前方後円墳であることや、埋葬施設の横穴式石室が一枚石の奥壁をもち床面に礫が敷かれることなどを明らかにした。これにより、同古墳が福島盆地最大、現状で東北第2位の規模をもつ後期古墳であることが確定し、この成果は東北南部の古墳時代終末時の政治社会関係を検討するためのきわめて重要な情報となった。また、調査成果の整理と分析を18年度後半に進め、3月に中間報告を刊行した。 3月には本宮市庚申壇古墳の測量調査を実施し、内容不明であった同古墳が墳長約40mの前方後円墳であることを把握した。この調査は、同古墳が所在し、古墳時代中期以降における福島県中通り地域中部の有力首長墓群である七ツ壇古墳群の全体像究明に向けた研究の一環であり、同地域の古墳時代終末過程を検討するための端緒に位置づけられる。 また、福島県内に所在する後期の重要古墳である須賀川市上川原古墳と福島市上条古墳群(福島市教育委員会調査分)の出土遺物の調査を4月から7月にかけて行い、実測図作成・写真撮影等の資料化を図っている。 これらの調査に併行して、岡山県、静岡県、愛媛県、青森県等の古墳、出土遺物、博物館に対する現地調査を行い、あるいは関連学会に参加し、福島県域の後〜終末期古墳および初期官衙・寺院の特質の把握と明確化に努めた。 これらの調査研究に併行して基本文献の収集を進め、デジタル一眼レフカメラやデジタルビデオカメラ等を導入するなど、調査研究環境の整備と充実に努めている。
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