研究課題/領域番号 |
17320125
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
宮本 一夫 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (60174207)
|
研究分担者 |
辻田 淳一郎 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (50372751)
田中 良之 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (50128047)
岩永 省三 九州大学, 総合研究博物館, 教授 (40150065)
溝口 孝司 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (80264109)
|
キーワード | カラカミ遺跡 / 壱岐 / 対外交流史 / 弥生時代 / 環濠集落 / アワビおこし / 東亞考古学会 / 鍛冶炉 |
研究概要 |
カラカミ遺跡第1地点Bトレンチの発掘調査を実施し、Bトレンチの遺物包含層や遺構を全て掘りあげた。これにより竪穴住居址4棟、土坑2基、小児甕棺1基、鍛冶炉3基を発見した。これらの遺構は弥生中期後葉から後期前半を中心とするものであり、カラカミ遺跡の環濠の南側にも集落が存続することが明らかとなった。また、こうした場所に1952年の東亞考古学会の発掘調査第1地点が設定され、当時の調査区出土遺物が今回の調査によって発見された遺構と関連する遺物であることが推測され、東亞考古学会資料をより歴史的に位置づけることを可能とした。そしてカラカミ遺跡が、弥生時代中期後葉から弥生時代後期・古墳時代初頭という期間に限られた環濠集落であることが明らかとなった。また、今回発見された2号住居址や鍛冶炉は、この時期にこの地点で鉄器の加工が行われていたことを示している。このことは、出土した鍛冶関係の石器の存在からもそのことを裏付けられる。一方で、アワビおこしやアワビの殻が集中して包含層から出土していることは、カラカミ遺跡の住民が漁撈民であったことを示している。干しアワビや鉄器は交易品であった可能性がある。さらに本遺跡から出土する楽浪系や三韓系土器など半島系統の土器、あるいは大陸でしか飼われていなかったイエネコの発見など、半島との交流を示している。このように、カラカミ遺跡は交易の拠点として利用された遺跡であったことが明らかとなった。また、遺跡の開始時期が同じ半島の交易拠点である韓国の勒島遺跡の衰退期と重なっており、勒島遺跡に代わって壱岐や糸島の弥生人が交易拠点して作り上げた環濠集落であることが明らかとなったのである。 以上の成果を、北京で開催されたSEAA(東アジア考古学会)で口頭発表し、また『カラカミ遺跡II-カラカミ遺跡東亞考古学会第1地点の発掘調査-』を出版し、調査成果を公開した。
|