研究課題
本研究課題における大きな試みは、研究者の知的財産理解に関する実証的調査である「知的財産理解度サーベイ」を11回実施し、のべ271人のデータを収集したことである。まず、このサーベイ実施にあたり、効率的なデータ収集方法の検討(山田)とともに、若手の法学研究者の協力を得て、狭義の知的財産法だけでなく、民法の契約問題まで含む問題作成を行った。サーベイの結果については、知的財産法研究者である研究分担者(上野、山名、宮脇、松宮)に加え、中堅の法学研究者の協力も得て、ソフトウェアの職務著作、ライセンス契約の免責条項、営業秘密の帰属、学内研究会における研究発表が公然実施になるかといった問題を中心に検討した。さらに、理科系研究者グループ(金森、新庄、本河、津田)とも検討を重ねた結果、第一に、単に設問ごとの分析だけではなく、一定の設問グループごとに相関分析が意義深いことが明らかになり、相関分析作業を進めた。第二に、上記分析のノートを最終的に大学知的財産管理者、教員個人、学生自身の自己啓発・自己学習用に内外で活用される「知的財産コード」の検討を進めた。また、サーベイから明らかになったのは、狭義の知的財産法だけではなく、民法一般、特に契約法の問題が重要なことであり、また、そうした法が必ずしも研究者に理解されていないことであった。つまり、知的財産法や契約法といった産学連携に関わる法がどの程度受容されているかという問題が存在する。そこで、この法受容問題の比較法的研究を行うために、知的財産やライセンス契約の基本法となる民法を中心に、中国および韓国の民法学者との共同研究も行った。上記の諸研究から、平成17年度には、研究者の知的財産理解度に関するサーベイに基づく実証的研究とともに、それを踏まえた法受容問題に関する理論的研究を進展させることができた。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
Das Recht vor den Herausforderungen neuer Technologien(Asada, Assmann, Kitagawa, Murakami, Nettesheim(hrsg.))
ページ: 247-267
知的財産法の理論と現代的課題(中山信弘先生還暦記念論文集)(相澤英孝, 大渕哲也, 小泉直樹, 田村善之編)
ページ: 349-364
Japanese Copyright Law(Writings in Honour of Gerhard Schricker)(Peter Ganea, Christopher Heath, Hiroshi Saito(ed.))
ページ: 41-49