研究概要 |
2006年度においては,研究代表者の所属研究機関変更という特殊事情もあり,年度前半の作業の中心は各研究者の個別研究に置かれざるを得なかったが,その進捗状況を確認すべく10月に開催した研究打合せ会では,個別研究のさらなる推進ののち,翌2007年夏に各員が成果を持ち寄って相互に批判的検討を加えるとの,今後の作業スケジュールの基本方針が確認された。また,年度後半に集中的に行った全体研究に関しては,セミ・ポリアーキー概念の精緻化を図るべく2007年2月に班長会議を開催し,空井がセミ・ポリアーキー概念を既存の政治体制論といかに接合すべきかにつき報告を行った。そこでの討論では,従来セミ・ポリアーキーをフル・ポリアーキーとの関連においてのみ考えてきたが,後者のdiminished subtypeたる前者をむしろ権威主義体制の一類型ととらえ,権威主義体制の基本的特質とされる「限定的な多元主義」構造において議会が相対的に優位を占める体制と位置づけ得ることが認識された。かかる認識を推し進めれば,本研究は権威主義体制カテゴリー内でのサブタイプ間の体制変動の研究という新たな意味づけを与えられることになろうが,こうした理論的方向性の修正にはさらに慎重な考察が不可欠との意見もあり,引き続き空井が理論的検討を進め,2007年度前半にその成果を全体研究会で報告することになった。また同じく2007年2月には小森宏美氏(京都大学地域研究統合情報センター)から,本研究が視野に収めるべき事例として他の国々に劣らぬ重要性を持つエストニアの戦間期権威主義体制に関し,有益かつ貴重な専門的知識の提供を受けた。 本研究の最終年度にあたる2007年度においては,各員は班内で調整を行いつつ個別研究を進め,夏に開催する全体研究会での議論を踏まえて,年度後半を報告書の執筆に充てる予定である。
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