研究課題/領域番号 |
17330031
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
大西 直樹 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (80152198)
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研究分担者 |
森本 あんり 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (10317349)
千葉 眞 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (10171943)
小倉 いずみ 大東文化大学, 法学部, 教授 (00185563)
佐々木 弘通 成城大学, 法学部, 教授 (70257161)
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キーワード | 政教分離 / ピューリタニズム / 信教の自由 / 権利章典 / 合衆国連邦憲法 / 修正条項 / 宗教的寛容 / 公定宗教 |
研究概要 |
本年度の主要な業績はこの研究プロジェクトグループが深く関わりを持ってきたハーヴァード大学神学部のDavid Hall教授を招いてのシンポジュームおよび研究会を開催したことである。Hall教授は、このプロジェクトには当初から深い関心を示し、きわめて協力的に政教分離問題全般にわたってアドヴァイスおよび情報交換をしていただいてきた。一方で、この研究プロジェクトの中心的存在であった斎藤眞教授を本研究の最終年に失ったことは、実に大きな喪失であり、共同研究者の研究意欲の回復に時間を要した。しかし、これまで積み上げてきた研究を、それぞれの分担者、および斎藤眞教授亡き後、新たに加わった千葉眞教授の協力も得て、最終報告『アメリカ合衆国憲法と政教分離に関する研究』を出版できたことは大きな喜びである。その内容は、小倉いずみ「コネチカット植民地の創設とトマス・フッカー」、David D. Hall著「Church and State in Early New England」、森本あんり「ニューイングランドにおける公定教会の変遷」、大西直樹「プロテスタント・アメリカにおけるカトリック:政教分離と信教の自由の視点から」、佐々木弘通「アメリカ判例研究ノート:Elk Grove Unified School District v. Newdow,542U.S.1,124S.Ct.2301(2004)」、千葉眞「宗教と政治の関係に付いて--オウム事件の遺した教訓」の六論文である。これらの論文を通じて読み取られることは、ピューリタンの神政政治から発足したニューイングランド社会が、公定宗教として会衆主義に固執しつつも、次第に他のプロテスタントの諸宗派にたいしても、さらには宗教改革時から仇敵であったカトリックにたいしても、門戸を開いていく過程が明確に見られるという点である。その方向性が確実となったのは、アメリカ連邦憲法修正条項第一条であるが、政教分離と信教の自由の国是が、現代のアメリカ社会においても歴然として機能し、最高裁の判決に明確に取り入られているのが分かる。問題は、この政教分離と信教の自由が、公認されるまでの過程にどのような判断、対立、矛盾があったかであり、そのプロセスを一次資料を駆使してある程度明確に出来たことが、本研究の一つの成果であると言えよう。
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