研究概要 |
最終的な研究報告書を作成した。すなわち,英国社会は,ミースのオープン、スペース論に見られるような,上流階級を中心とする伝統的なチャリティの他,5%フィランスロピー活動やシーホームのような新興のミドル、クラスによる固有のフィランスロピー,そして,NDFS(全国預金友愛組合)のような,労働者階級による相互扶助を含む,多様で重層的な構造を持ったボランタリーなセーフティネットによって支えられた社会であることを,歴史的に,かつ実証的に明らかにした。それらの規模は,思いの外大きなものであった。そして,フィランスロピー活動と制度は,単に過去の歴史的な遺物ではなく,現在においても機能しており,わが国の未来社会のあり方について有意義な示唆を与える仕組みであることを提唱している。 構成は以下の通り;序章(岡村):研究経過と概要。第1章(金澤)「慈善信託法(1853年)の長い制定過程-チャリティにみるイギリスの自由と規律-」。第2章(光永)「フィランスロピ活動と王室-ミース卿によるオープン、スペースの整備を題材に-」。第3章(岡村)「5%フィランスロピー活動の意義と限界-ウォーターロウと工業階級住宅改良首都協会を中心に-」。第4章(山本)「英国の住宅問題におけるフィランスロピーと国家福祉-B、シーボーム、ラウントリーの活動を中心に-」。第5章(高田)「全国預金友愛組合と老齢年金-第一次大戦前イギリスにおける相互扶助の変質と国家福祉の登場-」。終章(岡村):総括。
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