研究課題/領域番号 |
17330048
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡崎 哲二 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (90183029)
|
研究分担者 |
松島 斉 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (00209545)
中林 真幸 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (60302676)
中村 尚史 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (60262086)
澤田 康幸 東京大学, 大学院・経済学研究科, 准教授 (40322078)
|
キーワード | 契約 / 契約理論 / 小作契約 / 雇用契約 / 企業 / 法 |
研究概要 |
2008年度、研究代表者の岡崎は、中林と協力して戦前日本の繊維企業の雇用契約に関する大規模な資料の収集を行いこれを完了した。また、戦前日本の小作契約を契約理論の観点から分析した論文を国際経済史協会のコンファレンスで発表した。中林は上記の作業と並んで、温情主義的な小作契約関係を軸とした農村社会が大恐慌で解体した際に、当時、経済学者達が予想していたのと相違して、日本は純粋な市場経済に向かうのではなく、政府による計画・統制経済に向かったという見取り図を示した。橋野は、19世紀末〜20世紀初めの羽二重輸出の増加に伴っての生じた粗製濫造問題に焦点を当て、中央政府、地方政府および産地がそれをどのように解決したかについて検討した。中村は、近代企業が、明治期の日本において早熟的に出現する過程と、その企業組織をめぐる所有と経営の対抗関係を、会社法制や税制といった法制度の影響にも注目しながら明らかにした。 日本で歴史上観察された以上のような契約現象を、現代の発展途上国における契約現象と比較するとともに、その理論的含意について考察した。途上国については大塚が、アフリカ諸国における最近の農地市場の活発化と、その貧困、所得分配、効率性への影響を体系的に分析した書物を編集した。黒崎は、途上国の経済発展における雇用形態の多様性とその機能について、現物賃金が果たす家計の食粗確保という役割に焦点を当てて分析した。加賀兄は、以上の実証研究を踏まえて、契約と法の関係、および法の概念について理論的に検討し、「契約」を単に当事者間の合意と捉えるだけではなく、そのガバナンスに関わる法制度にまで視野を広げる必要があること、法はハードローとソフトローとの複合体として存在しており、その全体的な機能を解明することで、「契約」に関するより深い理解が可能となることを論じた。伊藤は、市場と組織に関する経済理論を展望し、企業と組織の相互浸透という現象に関する理論的な見方を提示した。
|