研究概要 |
産業クラスター(産業集積)の競争力や環境適応力を決定する重要な要因として,ソーシャル・キャピタルの役割を実証研究することが当研究の目的である。産業クラスターについては,理論的研究と実証研究が十分に連結されていない。それをソーシャル・キャピタルの概念を導入して,それを可能とするとともに,政策に活用できる理論としたい。 ソーシャル・キャピタルについては,さまざまな視点から研究されているが,実証研究にたえる概念にまでは十分に高められているわけではない。しかし,本研究では信頼関係を15のパラメーターで指数化して,ソーシャル・キャピタルの代理変数として,産業クラスターの国際比較調査を進めている。イタリアのプラート,フィンランドのミッケルと日本の燕及び尾張一宮を対象として産業クラスターを比較調査してきた。産業クラスターは経済的な取引関係だけではなく,それがコミュニティとしてどのように機能するかが重要である。コミュニティの基盤となるのはソーシャル・キャピタルであり,その経済的な取引関係の効率性,そして競争力を支えるものはソーシャル・キャピタルである。この視点から見ると,産業クラスターの構成員からなるコミュニティの性格が重要であり,それがソーシャル・キャピタル度として表現される。産業クラスターのパフォーマンス,そしてその変化のメカニズムと構造をソーシャル・キャピタルと関連させて研究をまとめる。 最終年度にあたり,残された調査を実施しながら,全体の理論構成をさらに明確にしてゆく。研究結果を報告書だけではなく,出版したいと考えている。
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