研究概要 |
本年度の研究実施計画では,連結売上高比率(連結決算売上高を単独決算売上高で割った値)のパネルデータ分析と新企業誕生や衰退企業撤退が経済,特に経済成長率に与えた影響の分析を行う予定であった. まず,連結売上高比率の分析は「連結・単独売上高比率のパネルデータ分析」という題の論文で行われた.この研究では輸出比率,外国人持株比率,集中度など様々な説明変数を用いて分析した結果,以下のような結論が得られた. ・外国企業と比べて競争力がある集中度が高い産業に所属する比較的規模の小さい企業ほど連結・単独売上高比率が高いことが明らかになった. ・外国人持株比率以外の株主構成はすべて連結・単独売上高比率に影響を与えていないことが明らかになったことから,日本では,外国人持株比率が高い企業以外は,株主構成は企業の多角化行動や新産業・新市場への進出行動に影響を与えないことが明らかになった. ・本業で売上高が成長している企業ほど新産業の創設や新産業・新市場への進出に熱心でなく,本業で苦戦している企業や衰退産業の企業ほど熱心であることも明らかになった.さらに産業内競争が厳しい産業では他産業・新市場への進出が遅れる可能性があることもわかった。 企業新陳代謝が,日本のマクロ経済に与えた影響については,2005年日本経済学会で行われた発表(テーマ:企業の新陳代謝と日本の経済成長)で報告された.この研究では,第1に1965年から1999年の35年間の年次データを用いて企業新陳代謝が日本の経済成長に与えた影響を計測し,企業新陳代謝によって経済成長率は2.81%から6.48%へと約2.3倍も高くなっていたこと,純開業率の長期的低下にもかかわらず,企業の新陳代謝が経済成長に与えた影響は一定であることも明らかにした。また,企業新陳代謝に影響を与えた要因としては,為替レートが重要であることが確認された.
|