研究概要 |
1,企業市場価値と利潤・配当の割引現在価値合計の関係:分析期間40年のケース 株式市場によって評価された企業価値が将来利潤の割引現在価値に等しくなっていたかどうかを実証的に分析した.分析対象となった企業は整合的なデータが収集できる製造業企業310社で,1968年の各企業の株式時価総額が2005年までの37年間のその企業の利潤の割引現在価値合計に等しくなっていたかどうかを検証した.資本資産価格形成モデルを用いた分析結果では,市場は各企業の将来利潤を正確に予測した.ところが割引率に関してはバブル崩壊までの約20年間はほぼ正確に予測したが,1990年代を含めると誤った予測をした.これは1968年の株式市場は20年以上後に起こる長期的な平成不況を予測出来なかったためである. 2,企業の参入・退出が利潤率に与えた影響の分析 企業の新陳代謝の利潤率への影響を,経済全体の利潤率と過去35年の間存在し続けた企業群の利潤率の差で分析した.この分析の結果,企業新陳代謝の利潤率引上効果率は長期的趨勢として増加していることが明らかになった,また,この差を被説明変数として回帰分析を行った結果,実質経済成長率の低下トレンドが企業新陳代謝率に上昇トレンドを引き起こした主たる要因であることを明らかにした. 3,ストックオプションに関する研究 日本でストックオプション導入を決定しているのが株主(株主主権仮説)か,経営者か(経営者主権仮説)を明らかにするために,それぞれの理論モデルを構築し,それに基づいて幾つかの仮説を導出した.ストックオプション関連データ,株価データ,財務データを収集し,これらの仮説を実証的に検証した.その結果,総合的に判断すれば,株主主権説よりも経営者主権説が現実と一致している可能性が高いことが明らかになった.
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