本研究の目的は、旧紛争国であるカンボジアを例に、貧困研究において見逃されてきた障害者の実態を明らかにすることであり、大きく2つの研究テーマからなる。テーマ1は、内生性の問題を処理した上で貧困と障害の因果関係を明らかにすることである。テーマ2は、障害者を対象とした社会プログラムに関して、無作為実験(プログラム参加者の無作為抽出)によるプログラム評価(Randomized Program Evaluation)を行うことである。テーマ2では、現地有力NGOが実施する、(主に紛争による)四肢切断者を対象とした職業訓練プログラムに焦点をあて、プログラム該当者を母集団とした家計調査をプログラムの前後に実施する。テーマ1では、既存の大標本家計データを分析した上で、上記家計データにプログラム非該当者を加えた一次家計データを分析する。本年度は、プログラム後のインパクト調査を、昨年度実施した第1、2回ベースライン調査標本に関して実施した。家計調査では、ベースライン調査と同様、家族構成、教育、健康、障害、職業、社会資本、資産、生産、所得、信用等の広範なデータを収集した(ベースライン調査で収集済みの固定要因は除く)併せて村落調査も実施した。資金提供者(ドナー)の事情により昨年度発生したNGOプログラム自体の実施の遅れ、内容の変更に伴い、第3回ベースライン調査が必然的に遅れたため、当該調査標本に関するインパクト調査は来年度以降に実施する予定である。同様に、インパクト調査データの分析も来年度以降の作業となる。
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