日本人はリスク回避的で起業家が少ないと言われているが、最近、最先端技術を駆使する企業が多く出てきている。これはリスクを回避しながらも、冒険的な行動を奨励する何らかのシステムが機能しているからと考える。体制経済学によると、たとえ一つの体制が規制的であっても、他の体制が補完的に是正し、新しい方向性を作り出す。このことは、社会的価値観がリスク回避的であっても、支援体制を導入することにより、リスクを取る行動を奨励できることを意味している。このプロジェクトはリスク心理と支援体制の補完性を研究する。 初年度は、この補完性を検証するために必要な理論を、経済学、心理学、経営学の文献を精読し構築した。その結果、ベンチャー支援体制と個人のリスク心理状態との関係を、ベンチャーのステージごとに独立企業家、企業内企業家、そして、単なるマネッジャー間で比較することにより実証することにした。支援体制に関しては、岡田のテクノ・ガヴァナンスの概念に則った数々の支援に焦点を当てる。リスク心理に関しては、実証経済学におけるカーネマンのフレームワーク理論、期待効用理論を心理学的に発展させたウェーバーのリスクリターン理論、合理的・規範的リスク理論、リスク態度の概念を使う。これらの理論を岡田が英文ダブル・スペースで35ページほどのプロポーザルとしてまとめ、インタビューを行うためのオープン・エンドの質問票を作り、岡田が大阪に2回、メッセィが東京に2回出張し、討論を重ねた。併行して、半導体、ナノテク、バイオテク産業のベンチャー企業と既存企業のリストをアルバイト学生3名を使い構築した。そして、岡田がナノ1社、バイオ2社、半導体1社、メッセィが半導体1社、バイオ1社をインタビューし、オープン・エンドの質問票をテストし、その結果を出張の機会ごとに討論した。現在まで、4回の修正を行った。これらの討論を踏まえ、全企業に郵送する質問票の、大まかではあるが、ファースト・ドラフトを作った。
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