研究課題
昨年度に引き続き、稲城市の高齢者の生活状況について調査を行った。その結果から星論文はパネル化されたデータから高齢者の健康感の悪化が親族や近隣・友人との付き合いという情緒的サポートの減少から説明可能であることを示している。稲田論文は、鹿児島県旧里村地域でのインタビュー調査によって、公的介護保険の実施が地域のインフォーマルなサービス供給の枠組みに打撃を与え、ボランティアとしてサービス提供に参加する高齢者自身の生きがいをも失わせたことを明らかにしている。医療費・介護費の側面から分析を行った。泉田論文は介護3施設のうち、費用に与える影響は介護療養病床が最も大きいことを明らかにした。また、医療費については小椋・川瀬論文が個票データを用いて、病床数の増大が入院確率を引き上げるだけでなく、入院医療費をも引き上げることを示した。保険者別の時系列変化だけでなく、個別保険者の状況を横断面からも検討する必要もある。地域ごとの給付水準の差と介護者の健康状態についての相関関係などを検証するために、「介護者の生活習慣および健康状態の地域による違いに関するアンケート調査」を小椋・鈴木・泉田が実施した。詳細は今後本格的に検討される。地方分権の流れと逆行する動きがあることも示された。高校卒業者の就職に関して、平成14年にそれまでの地域単位の就職斡旋からインターネットを介した全国一律の求人票web閲覧方式が導入された。西村論文は、沖縄県を事例に、この全国ネットワーク化が地域の実情と必ずしもマッチしていない可能性を指摘している。生活保護についても、今年度から分析が開始された。鈴木・周論文が1992年以降の生活保護率の高まりが高齢化によって説明されるため、年金と生活保護の一体的な改革が必要なことを、漆原論文が今後の生活保護行政における地方自治体、特に都道府県に期待される役割について明らかにした。
すべて 2007
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Discussion Papers in Economics (Society of Economics Nagoya City University Nagoya Japan) 467号