研究概要 |
平成19年度は日本の光触媒分野の産学連携に着目することによって,学術研究と産業化に対して開発コミュニティーの成員が果たした役割をネットワークの視点を入れて実証研究した。具体的には,研究者の論文発表件数,特許出願件数を被説明変数とし,どのような産学連携が実現される時に企業のR&D実績があがり,同じく学術研究が振興されるか,実証研究をおこなった。分析によって,大学におけるコンサルティング科学者という概念を発見し,また,同科学者の役割に関する経営,政策的含意を明らかにした。研究の成果は2編の論文として平成19年6月にコペンハーゲンで開催されたDRUID Summer Conference2007において発表された。 環境技術分野に関しては,鉛フリーはんだを対象として,研究開発ネットワークが技術変化と環境規制に与えた影響を,日本と欧米で比較分析した。日本においては欧米と比較して緊密な産学官のネットワークが形成され,鉛フリーはんだの普及が先行しており,同事実の分析から,大学研究者が技術変化の速度と方向に関する調整役の役割を果たすことによって地球環境問題など,ステーク,ホールダー間の利害の調整が難しい社会的課題の解決に貢献する可能性を明らかにした。最終年度の取りまとめとして,以上の3編の研究成果を含む編著を東京大学出版会から出版した。 バイオ分野に対するネットワーク分析に関しては,高いリスクを伴う創薬の開発における研究者ネットワークの役割を日米のナショナル,イノベーション,システム間で比較分析した。その結果,ハイリスク,イノベーションの実現のためには研究開発に適したイノベーション,システムとリスクテーキングを可能にするソーシャル,キャピタルが必要であることをネットワーク分析の視点から明らかにした。日本の創薬の活性化に多くの含意を持つ研究成果は平成19年度に日本語版が出版され,次年度以降,英語によっても出版される予定である。
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