研究課題/領域番号 |
17330094
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
大木 裕子 京都産業大学, 経営学部, 准教授 (80350685)
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研究分担者 |
小松 陽一 関西大学, 総合情報学部, 教授 (10068140)
古賀 広志 関西大学, 総合情報学部, 准教授 (20258312)
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キーワード | 産業クラスター / ヴァイオリン製作 / クレモナ / 伝統技術の継承 / イノベーション |
研究概要 |
クレモナに在住する弦楽器製作者の現状と将来の全体像を把握するために、定性調査の結果に基づき定量調査に向けた調査票を日本製作者に配布した。平成19年度はこれをイタリア語に翻訳し、コンソルツィオに所属し工房を営む約130の製作者を中心に依頼し、そのうちの70枚(回収率53.8%)を回収した。平均年齢は37歳、過去20年の平均クレモナ在住は14.0年、ヴァイオリン製作歴は16.8年であった。調査結果は、単純集計及び、χ2検定によるクロス集計をおこなった。更に定量調査の分析を精緻化するために、製作者への面談調査を実施した。 分析の結果は極めて興味深く、イタリア人とイタリア人以外の製作者の相違も顕著に見られた。分析の結果は(1)伝統と製作学校、(2)競争と協調、(3)情報、(4)帰属意識、(5)多様性という観点からまとめている。クレモナの製作者は伝統的手法を守りたいと考えている。しかし、クレモナの伝統としてクレモナらしさと言われるクレモナ様式とは、正確な一つ一つの作業を通して実現する全体のバランス、雰囲気であって、一つ一つの工程分析がされているわけではない。各製作者が正確な一つ一つの作業を学んだのは、製作学校である。しかしその製作学校は、長年のクレモナの空白期の後に1938年に設立されたもので、当初はクレモナ人で教鞭に立つ製作者もおらず、外国人によって教えられていた。従って、製作学校で教えている技術はストラディヴァリの時代の技術が継承されているというよりは、設立以降の試行錯誤によって生まれたもの、更に言えば、ビソロッティやモラッシ、スコラーリといった現代の名マエストロにより伝えられてきた彼らの技術である。現在のクレモナの製作者の大半は、これらのマエストロの弟子、または孫弟子であり、師匠の技術を継承しようとしているに過ぎないことが明らかになった。詳細については、出版物を刊行する。
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