本年度は、ベトナム・ラオス・カンボジアの縫製企業を共通して調査し、そのことでWTO加盟を始めとする経済統合に対応する各国の企業経営の特徴を指摘することが目的であった。 ベトナムは2007年1月11日に150番目のWTO加盟となった。その前に越米通商条約が締結され、現在は米国の最恵国待遇をベトナムは受けている。これに伴って縫製品の輸入制限が撤廃され、ベトナムの対米輸出が急増した。他方、WTO加盟は国内の金融・株式市場の開放を迫り、外国投資ファンド資金が大量に流入した。さらに国営企業の経営改革を目的として、株式公開と上場が今後も続々と予定されている。これらの研究成果は著書として公刊された。 ラオスは、2006年末の「東西経済回廊」の開通を契機にして、日本の運送会社も進出した。バンコックとダナンおよびハノイを結ぶ原材料部品の供給ルートの単なる通過国にならないために、ラオス独自の経済発展政策が必要と思われる。これは論文で公表された。縫製企業では、タイの「衛星工場」として日系企業の数社が操業中である。ラオス国営の縫製企業を訪問したが、欧州向けの輸出品を生産しており、生産・品質管理の基本である整理・整頓の水準は高い。 カンボジアでは中国縫製企業の進出が顕著である。資本・管理・技術は中国人に依存し、生産がカンボジア人に依存する工場が複数あった。中国製品の輸入制限を回避するための進出である。同国で最大の問題点は、複数の労働組合が一企業内に存在することである。多党制を認める民主国家のカンボジアであるが、労働組合対策はどの企業も苦慮している。日系企業の進出はシバヌークビルの工業団地を除いて、かなり慎重にすべきである。 本年度は、当初の目的の大部分を達成できたが、ベトナム調査にやや偏重した。それはWTO加盟前後で、同国の企業経営の変革が顕著であったためである。次年度に研究成果の過不足を調整したいと思う。
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