研究概要 |
本研究は,垂直的市場構造において発生する,流通業者の製造業者・卸業者に対するパワーが,他のチャネル構成員,すなわち企業によってではなく,消費者の幾つかの行動を通して形成されるという仮説を考察するものである.初年度である17年度は,研究構成員でそれぞれ個別的に研究成果が得られた. 1つには全国物価統計調査の卸売調査編を用いて,我が国の主にナショナルブランドから構成される134の商品の,地域別の卸-小売間の取引価格を取り上げ,価格の卸集中度に対する弾力性を計測する計量分析を行った.これにより相対的に規模の大きな小売業態では,上流の卸売業者の集中度が上昇し,寡占化することによる仕入れ価格の上昇はあまり見受けられないことが明らかとなった.この成果は国内の学会で報告した後,研究論文として英文で執筆し,マーケティングの査読付き国際学術誌に投稿した.次に消費者が流通チャネルにおけるパワー関係をどの様に知覚しているかを探るため,調査会社を利用して多数の消費者を対象としてアンケート調査を実施した.具体的には,消費者は製造業者・小売業の間ではどちらが交渉力等のパワーを有しているかを,様々な設問を用いることで,多面的に把握できるような統計調査を行った.この結果は多変量解析にかけ,幾つかの興味深い結果を得ている.さらに数名の研究者・実務家に聞き取りを行うことにより,専門的な知識の提供を受け,こうした研究の理論的側面が現実的な妥当性を持つことを確認した. なお以上の研究と,それに関連する成果は,研究発表の項目に記載しているとおり,内外の査読付き学術雑誌をはじめとしていくつかの出版物に収録された.
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