本年度に実施した研究およびその成果は次の通りである。まず、製造業者と小売業者に対してアンケート調査を実施し、両者の間のパワー関係の知覚を測定した。具体的には、製造業者と小売業者の直接取引を対象として、最も重要な取引先一社と主要取引先全体それぞれとのパワー関係を測定した。両者のデータを比較分析した結果、最も重要な取引先については次のことが明らかになった:(1)製造業者は小売業者の方がより強いと感じているが、小売業者は両者のパワーが同程度と感じている傾向にある、(2)パワー知覚の源泉は、製造業者については会社規模、小売業者については会社規模、取引額、消費者情報の保有である、(3)小売業者の中ではGMSと食品スーパーが自社を強いと感じ、小規模商店と通信販売は製造業者の方が強いと感じている傾向にある。また、製造業者はGMS、食品スーパー、ドラッグストア、ホームセンター、コンビニエンス・ストアのパワーを強く感じている、(4)製品カテゴリー別に見ると、特に食料・飲料、衣類、トイレタリーの製造業者が小売業者を強く感じている。小売業者は娯楽・レジャー用品の製造業者を強く感じている。 主要取引先全体とのパワー関係については強くはないものの次の関係が見られた。製造業者については、消費者ニーズとの関係で取引先を頻繁に変更する、あるいは消費者情報を入手し易いと感じている製造業者は自社の方をより強く感じているのに対し、小売業者との間でトラブルや問題が頻繁に発生すると感じている製造業者は小売業者の方をより強く感じる傾向にある。小売業者については、製造業者と共同の商品開発を積極的に行っている、消費者ニーズとの関係で取引先を頻繁に変更する、納入価格引き下げや社員派遣の要求を頻繁にしている、あるいは消費者情報が入手し易いと感じる小売業者は自社の方をより強く感じる傾向にある。 この他、前年度から引き続き地域別の卸-小売間の取引価格を取り上げ、価格の卸集中度に対する弾力性を計測する分析を行った。こちらの成果は今年度国際学術雑誌に受理され、出版予定となった。
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