研究年度の最終年度に当たる平成19年度は、日本・中国・アメリカの3カ国における質問票調査の実施およびフォローアップ、データ処理および分析、論文執筆および国際カンファレンス・ジャーナルへの投稿を行なった。 調査の結果、日本のベンチャー企業計247社(うちメーカー184社、サービス業63社)、中国のベンチャー企業222社、アメリカのベンチャー企業143社からの有効回答を得た。 各国における最低2回のフォローアップを含め、3カ国でのデータ収集がすべて完了したのは2007年10月であった。その後はデータ分析と論文執筆に専念した。執筆した論文は、主として「日本のベンチャー企業における知識の冗長性と市場情報の利用および事業成果との関係」「日本のベンチャー企業における市場調査活動のあり方と事業成果との関係」「ベンチャー企業における組織の公式化と市場情報の利用および事業成果の関係に関するアメリカ・中国・日本の国際比較」「中国のベンチャー企業における市場志向の実現とその規定要因」等に関するものである。 論文は国際カンファレンスやジャーナルに投稿し、平成19年3月時点でマーケティング分野の世界トップの学会であるAMA Summer Educators' Conferenceに2本採択されている。海外のトップジャーナルに投稿した他の論文は、研究期間終了時点では審査中である。審査・刊行期間は、海外では数年を要する場合もあるため、研究期間内にすべての論文を刊行することは困難であるが、海外ジャーナルで研究成果を刊行する方が、学会における波及効果は高い。 三年間の研究期間を通じて行ったベンチャー企業における市場情報の利用を実証的に検討した研究は、それ自体世界的に見ても新規性が高い。加えて日本のみならず3カ国での比較研究を実現した点で、本研究は、理論的にも実証的にも先行研究に十分貢献しうるのものとなったと考えられる。
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