研究概要 |
われわれの研究目的は,会計制度のトライアングル体制における問題点を理論的に検討し,それについて実証研究を行い,実証研究の結果に依拠して会計制度の設計を試みることにあった。このような研究を進めるにあたり,われわれは大まかな役割分担を決めた。担当者は,(1)会計の諸問題を理論的に分析し,検証すべき仮説を提示するグループと,(2)提示された仮説の検証可能性を考察し,実証分析により仮説を検証するグループに分けられた。前者のグループから,会計制度の問題として,概念フレームワークと会計基準の個別問題,会社法と資本会計の問題,法人税法の規定と財務会計の関係,および監査における諸問題が指摘され,それぞれを理論的に検討した。それらの問題を解決するために,実証可能な命題を設定し,それぞれについて実証研究を行った。実証研究は,(1)会計制度そのものに関連する研究,(2)損益計算書に関する研究,(2)貸借対照表に関する研究,(4)企業の会計手続き選択に関する研究,(5)内部統制と監査の品質に関する研究に大きく分類される。いずれの実証研究も,現行制度の問題点をピンポイントで把握し,その解決方向を探るため,適切なサンプルとメソドロジーを用いて仮説を検証している。これらの実証研究にもとづき,われわれは会計制度の設計について議論をした。そして9つのテーマを設け,具体的な提言を試みた。それは,(1)会計情報の質的特性に関する提言,(2)特別損益の報告に関する提言,(3)ダーティー・サープラスの計上に関する提言,(4)包括利益の報告に関する提言,(5)連結財務諸表に関する提言,(6)退職給付会計に関する提言,(7)法人税等の会計処理に関する提言,(8)新株予約権の失効に伴う会計処理に関する提言,(9)払込資本と留保利益の区別に関する提言である。以上の研究成果として,須田一幸編著『会計制度の設計』(2008年,白桃書房)が刊行された。
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