研究課題
基盤研究(B)
本研究は、イ)政治的変動期(日本は終戦直後から1950年代、韓国は1980年代後半から1990年代まで)における労働協約の成立・変化の過程を観察し、ロ)雇用の諸慣行と企業別労使関係がどのような背景のもとでどのような労使の意思決定プロセスを経て形成・変容されたかを分析することを通じて、ハ)各社会における労使の「秩序形成」過程の特徴を検討し、かつ固有の課題を析出することを目的とする。得られた研究成果をまとめると、次のようになる。日韓の労使関係は、企業内労働組合がその担い手となっている点では類似しているものの、現場労働者の技能をどのように活かすかをめぐっては著しい対照をなしている。現場労働者の技能を重視する日本と違い、韓国はそれをあまり大事だとは思わず、現場労働者のなかからコアとなる層を意識的に育てようとする考え方も希薄である。このような相違をもたらした要因は、次の三つと考えられる。第一に、戦後経済成長の初期条件における「熟練労働者」の蓄積程度と彼らの協力を必要とする考え方に日本と韓国が違っていたことである。第二に、一般労働者が長期的な能力向上にコミットするか否かのことである。日本は普通のブルーカラーまでもが能力にコミットし、それをもってホワイトカラー並みの「社会的地位」を追求する。しかし、韓国のブルーカラーはホワイトカラーとの格差縮小を要求するものの、ホワイトカラー並みの能力は主張しない。第三に、戦後のイデオロギーの影響である。傾向的に日本の労使関係は協調的であるが、韓国の労使関係は「労働排除的」である。この相違は経営者の態度に起因するところが大きい。そして、その態度に影響したのが、日本においては「民主化」、韓国においては「分断」によるイデオロギーの特質である。
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『韓国産業研究院Discussion Paper』 (出版確定)
KIET Discussion Papers
in Hyeon-Chul Kim ed., Studies for Thyotism, Seuol Natl. Univ.
『社会政策学会誌』 第18号
ページ: 33-47
『国際労働ブリーフ』 Vol.5,No.4
ページ: 28-38
The Journal of Social Policy and Labor Studies No. 18
International Labor Brief Vol. 5, No. 4