平成17年度は、主に名古屋に居住する新来韓国人を取り上げ、調査研究を行った。その結果、名古屋市都心部に食材雑貨店や飲食店などを営む一定の自営業者層が形成されていることがわかった。名古屋市中区の新栄学区には292人(2004人)の新来韓国人が居住している。新栄学区には、コリアンストリートといわれるほど、新来韓国人による韓国食材店や美容室、衣装店などが集まっている。韓国系のエスニック・ビジネスの中心は韓国系の生活情報誌である。韓国系生活情報誌を軸として、新来韓国人のエスニック・ビジネスが成立している。新栄学区の自営業者層の事例として、以下の4人への聞き取り調査を行った。1)J食材店は30代の男性が経営している。経営者は1993年に留学生として来名して、1995年から名古屋企画を成立させた。現在34人の従業員がある。顧客構成をみると、韓国人が6割以上であり、日本人は3割である。J食材店の主人は、町内会のことは知らないし、近隣の住民にゴミの出し方で嫌がられるという。一方、2)K食材店はスーパー兼レンタル・ビデオ店である。経営者は45歳の男性で、韓国地方出身である。1988年、在日コリアンの親戚を頼って日本にやってきた。しかし、現在は関係ないという。地域社会とのかかわりは、町費は私う程度であり、地域社会での付き合いはほとんどみられない。3)Hクリーニングの経営者は、40歳代の韓国・日本人夫婦である。1997年開業した。最初は携帯電話と車だけであったが、2000年から新栄1丁目で店を出す。顧客は韓国人の女性で、顧客の多くは日本語ができない。4)古典衣装店の経営者は、50歳代の女性で、1990年代より韓国と日本を往来していた。ソウルで衣類店を経営していたが、2002年に名古屋で衣装店経営するようになった。経営者は現在教会中心の生活を送っており、宗教生活が生きがいである。顧客は新来韓国人、在日コリアン、日本人など多様である。このような新来韓国人の自営業者層の分析を通じて、近年従業員層として入ってくる中国朝鮮族との関係について分析していくことが必要である。なお、以上の調査結果は、第22回日本都市社会学会大会「地方都市における韓国系移住者の流入・定着過程-名古屋市を事例にして」(大妻女子大学2005年9月)で発表した。
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