本研究の目的は、米国に定着した韓国系移民と比較する視点から、日本の韓国系移住者のエスニック・ビジネスの起業過程とその社会的機能を解明することである。分析方法は質的調査と量的調査である。調査実施計画にそって、日本の名古屋市の韓国系移住者によるエスニック・ビジネスを分析したあと、米国のニューヨーク市に形成されたコリアン・コミュニティについて比較調査を実施し、その結果以下の知見が得られた。 1)日本の名古屋市において、在日コリアンは中村区や南区に朝鮮部落などを形成し、主に自営業を営みながら、定着した。在日コリアンは土着住民との共生関係が形成できず、九州出身の新着住民と一緒に町内会を形成した。この町内会の中心は日本人住民であり、在日コリアンは周辺的な存在として関わってきていることがわかった。1990年以後の名古屋市都心部に定着する新来韓国人は韓国系のプロテスタント教会を中心とする共同体を形成しつつ、とくに中国朝鮮族を従業員としながら、雑貨店や食堂などの自営業を営んでいる。新来韓国人によるエスニック・ビジネスは都心部を中心に展開されているが、新来韓国人自営業主と日本人住民とは消極的な関係を有していることが明らかになったのである。 2)ニューヨーク市のコリアンはブラッシング地区の韓人社会は華人社会と経済的な競争関係にありながら、政治的には協力するという選択的に民族関係を形成している。とくに中国朝鮮族は韓人コミュニティとの共生関係にあることが注目される。ブラッシングは、コリアンタウンであり、チャイナタウンでもある。コリアンタウンとして、新着移民者や留学生、高齢者が多く住んでいて、民族・家族・親族の関係が優位である。中国朝鮮族は韓人と仕事の面で共生関係を結びつつ、華人社会において生活の場をもっていることが知見として指摘できる。
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