個人間のモバイル技術を使った視覚イメージの伝達について、昨年に引き続いていくつかの設定の下で携帯電話のデータを収集し調査を行なった。例えば、携帯電話の視覚伝達機能を使った「場所の伝達」という設定では、視覚イメージが空間イメージ(場所情報など)や時間イメージ(過去現在未来、すぐ、ゆっくりなど)といかに結びついて共同理解を生み出しているかデータをもとに考察した。 また、複数の人々が関わる共同作業において、その作業空間での身体的な移動が、視覚イメージの伝達行為とどのような関係を持ちながら、遠隔地にいる作業従事者の間でそれぞれ構成されるかについて、前年度に引き続きフィールドワークを行ない、その行動の構造を明らかにするための観察を行なった。このとき、現場的なコミュニケーションの観察から得られた諸特徴が、指示システムの効率的なあり方とどのような関係を持つか考察した。そのために、それぞれの作業者と指示者について実際の作業場面をビデオ撮影し、その録画映像をエスノメソドロジー・会話分析の手法を用いて分析した。同時に、この観察研究においては、指示に関して利用する機器が変化することで、お互いをモニターするための作業支援的なモバイル・テクノロジーがいかなる意味をもたらすか、その可能性を検討した。結果として、従来考えられてきた、コミュニケーションにおけるお互いの状況の不可視性自体が問題にならないようなやり方が相互行為の場面において実践的に達成されており、単純に視覚的な手がかりを提供するだけがテクノロジーの役割ではないという可能性が示された。
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