3年間に計画し、得られた成果は以下のとおりである。まず、1.文献収集による情報収集と研究動向の把握。2.リーダーシップ養成とリカヴァリをリンクさせた実例を実地訪問を通して観察し、関係者から情報を収集する。3.日本でリーダーシップ養成を目指した研修(特に当事者による健康促進の活動の実践)を実施。4.研究成果の発表と普及。 具体的には以下の成果を得た。1では、精神保健やリハビリテーション領域でのリーダーシップ養成やコンシューマー研修を目指す「リーダーシップアカデミー」訓練マニュアルの日本語翻訳を行い、リカヴァリ研究会の名で出版した。2については、コロラド州ボールダーにおける社会的企業、当事者雇用実態の把握につとめた。北米の各地では郡の地域精神保健福祉政策の民間委託が進んでおり、雇用形態も、社会的企業による当事者雇用と一般企業への就労支援とが並行して進められている。3および4については、日本精神障害者リハビリテーション学会が11月に名古屋で開催された際、リカヴァリを支援する当事者主導のワークショップを開催した。このワークショップは久留米WRAP研究会との共催で実施。このワークショップには、本研究の開始当初から当事者の立場で研究協力を募ってきた鳥取の当事者グループのメンバーが参加し、グループを運営し、WRAPの研修の実演とフロアーとのディスカッションを実施した。 リカヴァリとリーダーシップ養成について、以下の課題を総括として挙げたい。リカヴァリは世界の共通概念として専門家が認めるというわけではないが、事実として、リカヴァリを焦点化した支援では当事者の成長が顕著に認められるということを、専門職が認識し、当事者とともに、政策への導入を先進諸国は行っている。この結果、当事者主導の精神保健支援サービスや当事者相互支援組織開発、当事者による多様なライフスタイルの獲得や多様な自己表現を許容する文化が育ちつつあることが、世界の動向として把握される。日本における課題も、当事者主導の立場を政策で表明することであろう。
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