研究概要 |
(1)助詞プロジェクト:日本語において助詞は,乳児が発話から単語を聴き取ったり,隣接する語のタイプを見きわめたり(品詞分類)する手がかりとなりうる。そこで,そもそも乳児はいつから発話中の助詞を聴き取ることができるのかを明らかにすべく,0歳-1歳台の乳児を対象に実験を行ってきた。結果,15ヶ月までに子どもは,発話中の助詞「が」を聴き取っているだけでなく,「が」のふるまい(省略可能なこと)まで理解するようになっているらしいことがわかってきた(Kajikawa&Haryu,2008,ICIS)。 (2)固有名詞プロジェクト,英語では固有名詞は普通名詞を文法的に区別するため,英語圏の子どもはこのような手がかりを用いて20ヶ月で既に適切に固有名詞を学習できるという(Belanger&Hall.,2006)。日本語にはこのような文法的区別はないが,日本語児は2歳後半になれば,既にカテゴリー名のわかっている動物に導入された新しい語は固有名詞と見なす,といった方略をとっている(Imai&Haryu,2001)。では,日本の子どもはいつからこのような方略を使うことができるのか。30ヶ月児には可能だが,26ヶ月児はまだこの方略を確立できていないことが見出された(Haryu,Imai,Okada&Kajikawa,2008,ICIS)。 (3)擬音語プロジェクト:日本擬音語に含まれる感覚の中でどこが言語普遍的でどこが日本語固有なのかを明らかにするため,ドンドンとトントンのように有声性において対比される擬音語を,音や音源たるモノの大小に対応づける感覚が,日本語話者,中国語話者,日本語を学習している中国語話者のあいだでどれだけ共有されているかを調べた。結果として,この感覚は言語普遍的ではないものの,日本語を学習する中である程度は身につくものであるらしいことが明らかになつた(針生,趙,2007)。
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