研究概要 |
1.5歳から3歳までの子どもを対象に,気質調査紙Early Childhood Behavior Questionnaire(ECBQ : Putnum et al.,2006)の日本語版を作成・実施し,その結果の日米比較を行った。また,社会的望ましさにはその文化の持つ信念体系が反映されると考えて,別の集団に気質次元の社会的望ましさ調査を実施し,本気質調査の結果をその観点からも分析した。 ECBQの18下位尺度のいくつかにおいて月齢群ならびに男女の平均値に関して日米で違いが認められたが,因子パタンを米国の結果(Putnam et al.,2006)と比較したところ(主因子法・斜交プロクラステス回転),日米の因子パタンの一致が示唆された。一方,社会的望ましさ調査の結果から,社会的に望ましいとされた気質次元の平均得点は一般に高くなるが,行動のチェックリストであるECBQは,母親に子どもの気質次元について直接評定してもらった結果に比べて,その影響を受けないことがわかった。 さらに初回(横断研究)の調査協力者から保育園に通っていない318名のデータベースを作成し,初回からほぼ6ヶ月経った時点で再度ECBQ日本語版を実施し,ECBQ日本語版の縦断的安定性(longitudinal stability)を確認した。その結果は(Putnam et al.,2006)とほぼ同様であった。また,注意機能の発達と関係すると考えてあやし方や遊び方を簡単な質問紙でとらえ,気質のとくに情動制御の発達との関係を検討することを試みたが,明らかな傾向を見出すことはできなかった。
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