研究概要 |
本年度は,対処の柔軟性に影響しているパーソナリティ特性である防衛的悲観主義と,社会的状況としての組織風土についての検討を行った。 (1)防衛的悲観主義型が対処採用とストレス反応に及ぼす影響 防衛的悲観主義は,高い不安を示すものの,最悪の事態を回避しようと問題解決型の対処をするといわれ,短期的には高い生産性を上げるものの,長期的には不適応だといわれている。本研究では,看護師を対象とした。防衛的悲観主義者は,仕事負荷が高く周囲からのサポートを受けていないと感じやすく,情動焦点型対処や問題焦点型対処を多く採用しやすいことがわかった。また,身体的ストレスも高いことが示された。防衛的悲観主義は,失敗回避動機や承認欲求が高く,他者に認めてもらおうと必要以上に努力するため,結果として問題焦点型対処の採用が多くなり,ストレスを強く感じるといえる。 (2)組織風土が対処採用に及ぼす影響 組織風土とは,組織のメンバーが組織に対して抱く印象であり,メンバーの対処採用に影響すると考えられる。本研究では,看護師の職場に対する組織風土の認知をもとに,対処方略の採用やストレス反応との関連性を,共分散分析を用いて検討した。業績規範は,仕事要求度を増大させてストレス反応を高める一方,情動焦点型対処を抑制することでストレス反応を低減させていた。支持的風土は対人依存的対処や問題焦点型対処を促進させ,ストレス反応の低減に結びついていた。 本年度は,対処の採用について検討を行ったが,来年度は対処方略採用の推移や変化をもとに,対処の柔軟性についてさらに検討していく。
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