研究概要 |
H19年度は,以下の検討を行った。 1。時間管理能力がストレス反応に及ぼす影響 限られた時間で与えられた仕事を効率よくこなしていくためには,どのような手順で作業を行うかという時間管理能力が大切である。職業性ストレスに柔軟に対応するためには,時間管理能力を有することが,ストレス軽減に役立つと考えられる。本研究では,時間管理能力を測定する尺度の日本語版を作成し,ストレス反応との関連を行った。調査研究において,時間管理能力の下位因子のうち,自律性がストレス反応を直接軽減させること,目標設定が時間制御知覚を介して間接的にストレス反応を軽減することが明らかになった。実際に作業を行わせる実験を行ったところ,時間管理低群よりも高群で作業成績が低くなり,予測とは逆の結果が得られた。初めて行う課題であったことから,時間管理高群は慎重になって確実な成績獲得を目指したため,作業課題を後回しにしたからだと考えられる。 2。対人関係場面における他者への注意と柔軟性 対人不安者が対人関係場面において高不安状態になるのは,他者の存在をきっかけとして,自己注目が生じることが原因だと考えられている。そういう状況で適切に対処するためには,自己の内的情報へ向いた注意を,他者を含めた外的情報に向けるという柔軟な対応が必要となる。本研究では,他者へ注目させる教示操作を行ったところ,低不安者は注意の方向性を変えることができるものの,高不安者は自己注目に固執することがわかった。注意の固執性が対人不安を高めているといえよう。
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