研究概要 |
本年度は,ADHDの診断・評価に有効とされる代表的な連続遂行課題(Continuous Performance Test:CPT)のひとつである視聴覚統合型CPT(IVA-CPT)を参考に,標的刺激が高頻度(84%)あるいは低頻度(16%)で呈示される2条件を設定し、視覚性連続遂行課題時(標的刺激:数字「1」、非標的刺激:数字「2」)と単純反応課題時の脳血流を、前頭前野16箇所からNear Infrared Spectroscopy(NIRS)により導出し、反応実行過程を遂行成績とNIRS指標から検討した。対象は、健常成人とし、10名強がNIRS計測に参加した。 結果、平均反応時間は,高頻度条件で短縮した。さらに、信号検出理論に基づく反応バイアスを算出したが、高頻度条件で成績の低下が認められた。今回検討した条件でのNIRS指標からは、標的刺激が高頻度に呈示される時には低頻度の時より、前頭前野でoxy-HBの増大が顕著に認められ、とりわけ左右の前頭前野外側部位では著しい増強が観察された。Herrmann et al.(2005)は、事象毎の脳血流変化を記録する方法を用いて、Go/No-go課題下での特徴を検討し、特にNo-go試行において両側前頭前野外側部位でoxy-HBが増大することを報告している。今回検討した条件では、標的刺激が高頻度で呈示される状況下において反応動作を制御するための賦活がより亢進することが推察された。 なお、他メーカー製品によるNIRS計測結果と比べても比較的安定したデータが得られており、装置自体もコンパクトでセッティングに時間も要しないなどの利点も確認され、臨床上の有用性が示唆された。本年度は装置の導入が主となったが、次年度以降、質問紙による各人の自己評価に関する心理特性との関連性についても検討を進めていく予定である。
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