研究課題
雄マウスの攻撃行動は、生後5-6週間目の思春期(puberty)到来の前後に発現し始め、その後性成熟とともに成体レベルの達することが知られている。我々の先行研究では、思春期での攻撃行動の発現の調節に、エストロゲン受容体ベータ(ER-β)が重要な役割を果たしていることを示唆する結果が得られている。すなわちER-βを欠損させた雄マウス(βERKO)では、思春期到来に伴って発現し始める攻撃行動の頻度が大きく増加しているばかりでなく、攻撃行動が極めて衝動的(impulsive)な特徴を示し、攻撃性を抑制する脳内機構の異常が示唆されている。本実験では、この様な攻撃性の異常を示すβERKOマウスにおいて、新生仔期での母親からの分離ストレスが、思春期での攻撃性のレベルや社会的探索行動テスト場面での不安行動にどのような影響を及ぼすのかについて検討した。生後5週目での攻撃行動テストにおいて、分離ストレスの負荷されなかったコントロール群のβERKOマウスでは、野生型(WT)マウスに比べて攻撃行動の生起時間が有意に長く、先行研究と同様の結果が得られた。一方、生後1日目から14日目まで毎日4時間ずつ母親から分離された雄マウスでは、攻撃行動の生起時間が遺伝子型を問わず減少していたが、βEREOマウスにおいて特に顕著な減少が見られた。生後7週目で行った社会的探索行動テストでは、遺伝子型間やストレス群間に顕著な差異は見られなかった。これらの結果から、新生仔期でのストレス負荷と思春期における攻撃行動発現との関係が示唆された。また、ストレス負荷による影響がβERKOマウスで特に顕著に認められたことから、ストレス応答システムの発達にER-βが関与していることが考えられる。
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