研究概要 |
高次視覚から行為選択に至る過程の解明を目指し、様々な研究を進めた。 以前の反応履歴が事象の時間知覚に影響するかどうかを検討した。左右に提示される刺激の色に基づき左右のボタン押しでできるだけはやく反応し、その後同じ刺激が提示され、あらかじめ定められた一定時間が経過したと思ったら同じボタンを押した。刺激と反応が同側にある対応条件で非対応条件よりも反応がはやいというサイモン効果がみられたが、対応条件の方が非対応条件よりもボタンが押されるまでの時間が短かった。これは時間作成での刺激位置と反応位置の対応や、直前の課題での反応時間の違いのみには由来しないことも明らかにした。これらの結果から、事象が繰り返されたとき以前の刺激に対する反応のはやさが時間知覚に影響を及ぼすことが示唆された。 更に、物体方向の視覚的認識の特性を、検討した。実際にヒトが物体の方向をどれくらい正確に認識できているかを直接に調べた。身の回りにある物体を様々な方向で見た画像を提示し,それらの物体がどのような方向を向いていると思うかを回答してもらった。その結果,得られた回答と実際の物体の方向との間には,一定のずれが生じていた。正面や真横,後ろ方向は正確に回答されていたが,斜め方向では回答にずれがあった。主観的な物体方向は実際よりもより横方向に偏っているのである。この結果は,物体が自分の方を向いているかどうかといった判断は容易だが,物体がどれくらい斜め方向かという判断は難しく,また現実にあまり重要な情報ではないということを示している。 いずれの研究も国内外の会議などで発表し、学術論文化を進めた。
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