研究概要 |
本プロジェクトの目的は、高次視覚と行為への理解であり、多くの認知心理学的実験が行われた。第1に、同時に提示される2つの日常物体の奥行き回転による方位差を弁別させる実験課題における反応時間と誤答率を測定した(Niimi & Yokosawa, 2008)。その結果、視覚系は正面、側面、後面に特異的であり、高速で正確であったが、斜め方向では時間がかかり不正確であった。このような特性は水平線や対称性などの方位特異的な特徴に基づくことが分かった。日常物体の方位の視覚判断の効率性は方位依存的であり、前後軸を基に知覚されている可能性が考えられる。第2に、刺激と反応が対応しているときに効率的であるという刺激反応適合性がまったく無関係な次元間でも生ずるかを調べた(Nishimura & Yokosawa 2006)。その結果、直交型サイモン効果と呼ぶ上右/下左が優位となる結果が得られた。この直交型サイモン効果は、左反応が正極になると減弱するか、逆転した。この結果は、刺激の正負の符号化によって、反応の正負の符号化が自動的に生起することを示している。第3に、時間的に系列的に提示された文字列中の標的において、報告される標的の正答率の違いを調べた(Ariga & Yokosawa, 2008)。その結果、提示系列の後半に比べ、前半に標的が提示されるとき、その正答率が低下することが分かった。この新しい現象を「注意の目覚め」と命名した。
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