研究概要 |
本研究の目的は,自己の身体仮想化実現に向けて,自己身体認識に関わる視覚,触覚,自己受容感覚の役割を「運動」と「記憶」に焦点を当て明らかにすることである.視覚,触覚,自己受容感覚など複数感覚を融合させ,それらの情報を自己身体から来たものとして把握する過程は、知覚・運動・記憶・学習過程などを含みこんだ複雑なものである。感覚情報や運動情報等を自己、あるいは、他者に帰属させるかということも大きな課題である。ここにはある種の推論過程を含む可能性が高い。そこで、触覚位置弁別課題を用い視覚的身体情報の効果、および、視覚遮断時における身体位置の時系列変化について実験的に検討した。その結果は、日本心理学会において報告した。本研究では触刺激の位置知覚には,体性感覚野の体部位再現マップでの符号化だけでなく,視覚的身体情報を参照しながら触覚位置の符号化を行っているという示唆を得た.視覚遮断時における身体位置の時系列変化については、身体的視覚情報と身体感覚情報との融合による身体空間定位のためのキャブレーション機構の存在を仮定し、視覚的位置判断課題と運動的位置報告課題により検討した。その結果は日本心理学会にて報告した。2つの課題の定位のエラーの時系列的変化違いから、キャリブレーション機構として、2つの機構を想定する必要があるのではという示唆を得た。 また、触刺激の移動方向を判断する課題で、視覚的身体視覚情報の与え方を操作し、触刺激移動方向の判断の錯誤が起きる条件を明らかにする研究を、現在実施中である。これは、自己身体を基準とした感覚情報と視覚的身体視覚情報の融合の仕組みを行動学的に解明する試みである。
|