研究概要 |
文部科学省が平成18年度に実施した教員勤務実態調査の結果を踏まえて,新学習指導要領策定で重視した「子どもと向き合う時間の確保」のための教育条件整備充実に向けて平成20年度教育予算編成に取り組んだが,その中で教職調整額の廃止を含めた教員給与,人事制度の大幅な見直し方策が浮上してきた。本年度の研究作業は,そうした教員給与政策の動向を見据えて,まず第一に,政府内における教員給与制度見直し論議の動向を整理しつつ,平成20年度教育予算編成過程における政府内の教員給与,人事政策をめぐる争点を整理すること,第二に,そうした政府の教員給与,人事制度の見直し動向と争点に対して,学校現場で学校の経営と教職員の管理にあたっている校長がどのような認識と評価をもっているのかを明らかにするため,全国の公立小中学校長の中から,東京都,大阪府の他,地域的特性とバランスを考慮して県民所得の中位,下位の県からそれぞれ3県を選び合計8都府県の公立小中学校約4000名の学校長を無作為抽出してアンケート調査を実施した(実施時期2007年11月中旬〜12月上旬の2週間,回収率48.6%)。それら二つの研究作業は,研究成果報告書としてまとめているが,特に,教員給与改革に関する全国学校長のアンケート調査結果からは以下のような校長の認識と評価があることが分かった。 (1)教員の給与水準や体系は教職選択の際に理由となったかという問いに対しては,「理由となった」32%あったが,「理由にならなかった」は58%と倍近くの回答となり,都市圏とその他の地域との差が殆ど無かった,(2)現行の教員給与制度については肯定的な評価が32%であったのに対して,見直しが必要としている割合が55%となっている。ただ,根本的な問題があり全面的改革が必要としているのは僅か6%程度だけである,(3)教員給与制度も問題点については,圧倒的に「人確法」の趣旨が後退してきていること,管理職の職責に比べて給与面が不遇,勤務実態に「教職調整額」が見合っていないこと等,処遇面での不備を問題とみていることが分かった,(4)職能給の強化については,肯定する割合が半数を超えているが,東京都では73%,大阪府で67%,その他の県で45%など地域的な差が大きくなっている,(5)政府内では,教職調整額の廃止が浮上しているが,教職調整額を廃止し時間外手当とすべきとする割合は15%程度で,多くの校長は問題があるとはいえ教職調整額の継続を望んでいる,(6)部活動を学校外の活動とすべきであるという考えが過半数を上回っている
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