文化的に多様な組織の間でのネットワークやパートナーシップへ急速に変化する人間活動の新たな形態を対象に、活動理論の第3世代と呼ぶことのできる概念と分析ツールを理論的に検討した。そこでは、単一の活動システムへの限定を超え、相互に作用し合う複数の異なる活動システムを分析単位にして、それらの間のネットワークや対話や協働をデザインする教育実践研究の概念と分析ツールが明らかになった。 こうした活動理論の新たなフレームワークにもとづき、拡張的学習の概念を、伝統的な学校学習の境界を超え、発展的な学びのネットワークを構築する新しい学習活動の形態と捉えた。また、拡張的学習は、社会をよりよく変化させていく活動をつなぎ合わせ、社会変化の担い手としての学校の積極的な役割と意義を追求するものである。 活動理論と拡張的学習の理論に関する新しい知識・概念の展開については、研究支援者を雇用し、関連文献の渉猟と分析を積み重ね、第一次報告書を作成した。 新しい学習活動の創造と学校システム開発に関する介入研究については、次のような二つの教育実践の形態を対象に実施した。 (1)クロス・スクール・ワーキング 学校を横断する新たな教育実践、つまり学校間、また学校と学校外の多様な組織との間を越境し横断結合する教育実践の中で、子どもの創造的な学習活動を促進しようとするものである。具体的には、小学校において教師とアーティストが協力して進める芸術活動の創造的な学習への介入研究を進めた。 (2)放課後教育活動 放課後教育活動の実践を通し、大学、小学校、学校外の専門家集団、社会団体、家庭、地域の間での生産的協働をモデル化し、現実の生活活動と発展的にネットワークしていくような子どもの拡張的学習を促進しようとするものである。具体的には、小学校と連携し、子どもと大学生が協働で創りだしていく放課後教育活動の実践への介入研究を進めた。
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