研究概要 |
本研究は、活動理論における活動システムのモデルを概念的ツールとして用い、新たな学校システム開発へ拡張的学習のプロセスからアプローチする介入研究を実施しようとするものである。 本研究では、学校学習の閉鎖的な活動形態の境界を超え、学習の対象を「学びのネットワーク」へ拡張的に転換する介入研究を追求している。この「学びのネットワーク」は、学校と学校外の仕事や組織といった異質な活動システム間で対話や相互作用を生みだす「ハイブリッドな活動システム」において立ち現れてくる。こうして得られた新たな知見については、日本教育学会の英文学会誌Educational Studies in Japan, No.1に掲載された論文において発表した。 また、拡張的学習は、子どもを含む教育実践の多様な担い手たちが、実際に直面している困難や葛藤、活動の矛盾を互いに分析することから始まり、現場自身の課題をボトムアップの協働によって立ち上げ、新たな解決策や活動のツール、コンセプトやモデルやヴィジョンを創りだしていくような学びあいのプロセスである。 本研究では、「学びあう学校改革」と呼びうるこうした拡張的学習のプロセスへの介入研究を、主に次の二つのフィールドにおいて実施した。(1)異学年混合のグループによるプロジェクト学習を志向した「小学生の放課後学習活動の実践開発」。(2)長期的な視点に立った学習指導を志向した「公立の小学校と中学校の連携による教育実践開発」。 本研究における理論的・方法論的フレームワークの構築では、研究支援者を雇用し、国内外文献のレヴューを進め、本研究の第二次報告書ならびにホームページを作成し発表した。また、編著書1件に成果を発表した。さらに、ヘルシンキ大学のユーリア・エンゲストローム教授、バース大学のハリー・ダニエルズ教授を研究協力者とする国際共同研究を推進した。
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