研究概要 |
本研究は、活動理論における活動システムのモデルを概念的ツールとして用い、教師、子ども、学校コミュニティの担い手たちの拡張的学習のプロセスへの介入研究によって、「学び合う学校改革」と呼び得る新たな学校システム開発を推進したものである。 学校システム開発への活動理論的アプローチは、「教室を超えて、子どもが自ら学ぶことの支援」をめざし、「学びのネットワーク」を創造する学校教育に焦点を合わせている。本研究では、大学と地域の公立小学校とのパートナーシップにもとづくプロジェクト学習の創造を事例にして、教師、子ども、学校外の多様なパートナー(大学、専門家、仕事の現場、コミュニティ組織など)の間で生み出される、ハイブリッドな共生型の協働活動への具体的な介入研究を試み、その効果を検証した。とくに、生活や経験をもとにして社会的に拡張していく子どもたちの「学びの軌跡」に注目し、それを教室内外の異なる様々な活動が柔軟に結び合わされていく、しなやかな「ノットワーキング(knotworking)」=「結び目づくり」という点から分析した。本研究は、「学びのネットワーク」や「ハイブリッドな活動」におけるノットワーキング型の学習が、多様でパワフルな「学びの軌跡」を生み出すことを明らかにした。教育のノットワーキングは、学校の活動対象を拡張し、学びの潜在的に多様な資源を結びつけ互いにやり取りさせる、という重要な意義を有している。 なお、本研究の成果については、研究協力者、ユーリア・エンゲストローム教授とともに、ヘルシンキ大学において国際ワークショップ'Knotworking,Learning and Teaching'(2007年11月1日)を開催して発表した。また、レフェリー付英文雑誌、英文図書(分担執筆)、和文共編著書などにおいて発表した。
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