研究課題
基盤研究(B)
本研究は、活動理論における活動システムのモデルを概念的ツールとして用い、教師、子ども、学校コミュニティの担い手たちの拡張的学習のプロセスへの介入研究によって、「学び合う学校改革」と呼び得る新たな学校システム開発を推進したものである。本研究では、大学と地域の公立小学校とのパートナーシップにもとつくプロジェクト学習の創造を事例にして、教師、子ども、学校外の多様なパートナー(専門家、仕事の現場、コミュニティ組織など)の間で生み出される、ハイブリッドな協働活動への具体的な介入研究を試み、その効果を検証した。本研究は、新たな学校システム開発にとって重要な意義を有する、次のような具体的成果を得るものとなった。(1)活動理論は、多様な活動システムが重なり合い相互作用する、新たな協働活動の形態を明らかにしている。(2)新たな学校システム開発への拡張的学習のアプローチの独自性は、学校の制度的境界を超え、伝統的な学校学習の活動構造を転換する「学びのネットワーク」の創造として特徴づけられる。(3)教師、子ども、学校コミュニティの担い手たちの拡張的学習のプロセスは、「学び合う学校改革」と特徴づけ得る、ボトムアップの協働や活動の自己組織化として生じる。(4)活動理論的な介入研究は、学校の活動を拡張すること、それをひとり孤立した学校の内側からではなく、学校と学校外の仕事の現場やコミュニティ組織とのハイブリッドな協働活動を創造することによって試みるものである。(5)学校、学校外の様々な参加者、そして学習者自身の間の柔軟な結びつきや創発的な協働は、多様でパワフルな「学びの軌跡」を生み出すことを可能にする。(6)新たな学校システム開発への介入研究は、社会的に分散した学びの潜在的に多様な資源を結びつけ互いにやり取りさせるとともに、「社会変化の担い手としての学校」という学校教育の拡張を可能にする。
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