研究概要 |
本研究の目的は,(1)EUの教育におけるヨーロピアン・ディメンションの概念についての再検討,(2)その概念に対する加盟各国における解釈及び実際の教育政策における運用についての比較考察,(3)2004年の加盟国の増加がヨーロッパという教育政策空間に与えるインパクトの解明を試みることの3点にあった。この目的のため,3年間の研究期間に以下の調査研究を行い,最終報告書に示したとおりの成果を得た。 第1年次は,EUの各教育政策の発展状況を施策当初から再確認,(2)EU加盟国の各教育改革の政策実施過程の分析,(3)加盟各国における個々の政策の実現状況の把握,の3つを研究計画の柱とし,加盟国中,特にフランス・ベルギー現地調査の実施に重点を置き,その他,各研究分担者(研究協力者を含む)による調査等を行った。 第2年次は,3回の国内研究会と1回の海外調査を行った。第2年次の研究においては,初年度のフランス・ベルギーにおける調査によって得られた全体のフレームを活用し,EU加盟国のコメニウスプロジェクトの実施過程が明確になるよう比較考察の水準を整えることができた。このことは,第3年次の調査を行う上で有益な成果となった。その成果を日本比較教育学会において発表した。また、加盟国拡大の視点を導入するために、外部の専門家を招き「チェコの高等教育のヨーロッパ化」の講演を依頼し、東欧への視座を整えた。 第3年次は,3回の国内研究会,オーストリア,イタリア,連合王国への海外調査を行うとともに,研究成果の公表として,日本比較教育学会,日本社会科教育学会で発表を行った。 以上の3年間の研究の成果を最終報告書にまとめたことにより,ヨーロッパ統合という歴史的プロジェクトにおいて,EUと加盟国の教育政策が果たす機能を具体的に論じる基盤を構築することができた。
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