研究課題
今年度は、これまで2年間に大阪の府立高校を中心にして行ってきたニューカマー高校生に対するインタビュー調査の結果の分析を主要な研究活動としてきた。その成果は、昨年度に引き続いて、2007年9月に茨城大学で開催された日本教育社会学会において報告した。この報告は、日本に在住するニューカマー高校生の声を、はじめて体系的に収集し、教育社会学の観点から整理・分析したものとして多いに評価されるべきものである。また合わせて、本年後には現地調査の第三弾として、2008年1月にブラジル・サンパウロおよびリオデジャネイロでの、日系人社会の現状についてのフィールド調査を実施した。現在、130〜140万人と言われるブラジル日系人のうちの4分の1程度が日本に出稼ぎにさており、ブラジル日系社会の空洞化・高齢化の危機が叫ばれている。今回の調査は、代表者にとっては、9年前の調査に続く第二回目のもので、前回の調査結果と今回のそれを比較検討するなかで、ブラジル日系社会が現在かかわる問題の固有性を把握することができた。それらの活動をもとにして、現在、成果報告書としての成果をも合わせ持つ出版物を刊行する準備を行っている。その著作(『高校を生きるニューカマー-大阪からの発信』明石書店より近刊予定)は、 「なぜ大阪府におけるニューカマー高校生の、全日制高校進学率が高いのか」という問いを教育社会学的な視点から探究したものであり、類書のない現状を鑑みたときに、大きな学問的意義を有していると言うことができる。