本研究の目的は、高等教育の質保証において先進的な実践を行っているアメリカ、イギリス、オーストラリアにおいて、国境を越えて設置された分校や学位を授与する教育プログラムの質保証の実態を調査し、その特色や内在する問題を明らかにすることにより、事後チェックに大きくシフトしつつある日本の高等教育の質保証システムのもとで、日本の大学の海外校の質保証の具体的あり方について実践的な提言を行うことにある。調査研究の概要と成果は以下のとおりである。 アメリカでは、海外で提供されるプログラムの質保証を担っている6つのボランタリーな組織であるアクレディテーション協会に対してアンケート調査と2団体のインタビュー調査を行った。 イギリスでは、高等教育質保証機構が国内外を問わず、大学教育の質保証は一手に引き受けている。この高等教育質保証機構と海外に分校を持つ大学への訪問調査を行った。特に大学においては、海外分校の質保証の実際と課題を確認した。 オーストラリアでは、国策として海外での教育プログラムの提供が盛んに行われており、アジアに進出する大学も多い。その質保証を行っているオーストラリア質保証機構と3大学への訪問調査を行った。 いずれの国の評価機関も大学も、海外で提供される教育プログラムについて、いかに本校と同等の質を維持しているかに焦点をあてて質保証に取り組んでいる。そのための負担は決して軽いとはいえない。ただ、海外での教育提供は、多種多様であり、一定の規模以上のプログラムの質保証は確立されているが、十分な評価が行われていない小規模なプログラムも相当数存在することを確認した。いずれの国の評価機関も負担軽減を視野にいれつつ独自の活動を行っているが、なかでもオーストラリアで挑戦が始まっている相手国の評価機関との連携は、有効な試みであり、日本にとって最も参考となるものと考えられる。
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