研究概要 |
今年度は最終年度であり,引き続きリジッド幾何学の基礎を研究した.特筆すべき点としては,9月に研究代表者と連携研究者の加藤文元(京都)がIHESで短期の研究を行ったが,IHESのO. Gabberとの連携が進み,基礎付けに必要であった座標環についての仮定を大幅に緩くできることがわかった.これは従来のネーター環論においてArtin-Reesの補題が演じていた役割を置き換え,可換環の完備化の理論を単純化するものである.この可換環論における成果については現在共著論文にまとめている.従来得られていたリジッド幾何学での結果もほぼこの緩い枠組みで成立するため,対応した書き直しを行っている(R. Huberのadic spaceの理論も一般化される).また,上述のように非常に基礎的な部分から見直しを行っているため,原稿も大部となっている.そのため,書籍としての準備が若干遅れているが,現在500ページ強の原稿を第一部として非常に近い将来の出版,成果公開を目指している.また,同時に代数幾何学への応用として代数空間の永田型のコンパクト化を得ていたが,方法を簡易化してコンパクトの境界がスキームになるように作れるようになった.代数空間のコンパクト自体,「Folklore theorem」であり,公刊された証明はなく,確定しているものとは言いがたい面がある.今回の研究がそれらの疑問点を払拭するものになることを期待している.この成果については2009年1月に東京大学で行われた国際シンポジウムArithmetic Algebraic Geometry Related to Moduli Spacesで講演した.この結果については論文としての公刊を目指している.
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