研究概要 |
Donaldson不変量とネクラソフの分配関数の関連を吉岡とLothar Gottsche(研究協力者)と共同研究を行い、さらに引き続き望月拓郎も加えて研究を続けた。 4次元多様体の上のインスタントンのモジュライ空間を考え、その上の自然なコホモロジー類を積分するものがDonaldson不変量であるが、b_+=1のときには、不変量はリーマン計量に依存する。二つのリーマン計量に関するDonaldson不変量の差を与えるのが壁越え公式であるが、これがNekrasovのインスタントンの数え上げの母関数で書けることを証明した。(ただし階数が二のときに限る)トーリック曲面のときに、モジュライ空間へのトーラス作用を詳しく調べることにより、この結果が証明される。この研究は平成16年度から始めたものをさらに発展させたものであり、トーリック曲面とは限らない一般の射影曲面についても同じ公式が成り立つことまで証明を行った。 また、K理論版のインスタントンの数え上げのミラーにあたるSeiberg-Witten曲線に付随したSeiberg-Witten曲線に付随したΘ-関数を調べ,インスタントンの関数を調べ,インスタントンのモジュライ空間の座標環からSeiberg-Witten曲線が復元できるという,K理論版のNekrasovの予想の証明を完成した。上の壁越え公式の類似が同様に成立することも証明した。ただし、インスタントンのモジュライ空間の場合には、コンパクト化に現れる特異点のために不変量の定義をどのようにしたらいいのか分からなかったが、複素射影曲面に限ると、代数幾何的なコンパクト化上の直線束のオイラー標数を考えることができるので、これを定義として性質を調べた。 さらに、望月拓郎の協力を得て、階数が高い場合の考察を行い、階数に関する再帰的な壁越え公式を証明し、それがやはりNekrasovの分配関数で与えられることを証明した。
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