研究概要 |
本年度は,対数幾何学を中心に研究を行った.前年度に,いわゆる小林・落合の定理の対数幾何における拡張を得ていた.この結果を導く上で重要なステップは,対数スキームのカテゴリーにおける対数射の剛性定理であった.この剛性定理は,先の論文では代数的閉体上定義された対数スキームに対して証明されたものであったが,これを一般のネータースキーム上の場合にまで拡張した.具体的には以下のような定理である.Sをネータースキームとし,X-->S,Y-->Sを半安定な射とする.M_S,M_X,M_YをS,X,Y上の対数構造とし,X-->S,Y-->Sは整でかつ対数的にスムーズな対数射(X,M_X)-->(S,M_S),(Y,M_Y)-->(S,M_S)に拡張すると仮定する.f:X-->YをS上のM_Y/M_Sに対して許容的である射とする.このとき,f:X-->Yの(S,M_S)上の対数射(f,h):(X,M_X)-->(Y,M_Y)への拡張は高々一つであるというのが一般化された剛性定理である.この剛性定理の対数幾何における小林・落合の定理以外の応用として,対数射の降下の問題が上げられる.この定理は以下の通りである.(X,M_X)-->(S,M_S),(Y,M_Y)-->(S,M_S),f:X-->Yは剛性定理のときと同様とする.S'-->Sを忠実平坦な射とする.X'=Xx_SS',Y'=Yx_SS'とおき,M_{X'},M_{Y'},M_{S'}をM_X,M_Y,M_Sの自然な射X'-->X,Y'-->Y,S'-->Sによる引き戻しとする.さらに,f':X'-->Y'もS'-->Sによるf:X-->Yの引き戻しとする.このとき,得られた降下定理とは,(S',M_{S'})上の対数射(f',h'):(X',M_{X'})-->(Y',M_{Y'})は必ず(S,M_S)上の対数射(f,h):(X,M_X)-->(Y,M_Y)に降下するということである.さらに,この降下定理以外にも,種々の剛性定理の応用が得られている.
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