研究分担者 |
上野 健爾 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40011655)
加藤 和也 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90111450)
深谷 賢治 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30165261)
中島 啓 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00201666)
玉川 安騎男 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (00243105)
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研究概要 |
算術多様体上の体積関数は,算術的ピカール群に有理数体をテンソルした群から実数への斉次的な写像である.これは,算術多様体上のスムーズなエルミート可逆層の小さな切断の個数の漸近的な挙働を示す量である.前年度から引き続き,体積関数についての考察を進めた.体積関数が連続であることは前年度までに得られた結果であり,これによって,いわゆる摂動論的手法が利用可能となった.その結果,アラケロフ幾何の種々の基本定理が自然に広い範囲まで成り立つことがわかり,いわゆる,双有理アラケロフ幾何を考え得るに十分な視野に立つことができた.今年度はさらにこれを発展させることを考えた.そのことを説明するために,まずは,双有理アラケロフ幾何における基本予想と考えている極限予想について述べたい.Xをd-次元算術多様体,Lをスムーズなエルミート可逆層とする.このとき,lim log(#{nLの小さい切断})/n^dが存在するだろうという予想が極限予想である.この予想を考えるための準備として,算術的ピカール群に実数体をテンソルした群からの写像に体積関数を拡張し,それが連続であることを示しておく必要がある.今年度はこの事実の証明に成功した.それ以上に,今までは,可逆層のエルミート計量はスムーズの場合のみを考えてきたが,前述の証明を通して,エルミート計量が連続の場合にも拡張できることが判明した.これらの考察により,少なくとも算術曲面においてはある種のベルグマン核の列の収束がわかれば,極限予想が示せることが判明した.通常の代数多様体上では,極限予想は正しい結果であり,その証明の鍵になるのは藤田の近似定理である.しかしながら,代数多様体上の藤田の近似定理の証明は高度の技法を必要とし,そのまま算術化するのは困難が伴う.本年度,算術多様体の場合の類似に備えて,代数多様体上で定義体の標数に関係なく,初等的な証明を見いだすことも重要と考え,その考察も行った.その結果,線型系の重複度を用いる簡明な証明を見つけるにいたり,来年度以降,その算術化の可能性を探って行きたい.
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