研究概要 |
今年度は以下の研究を行った。 (1)同分布を持つ独立確率変数の和の分布の研究,特に分布がFat Tailを持つ場合の極限定理の研究 市場リスクやオペレーショナルリスクを実際のデータから求めるときには,実務において多くの場合,同分布を持っ独立確率変数の和としてリスクを処理することが多い。しかしながら,リスク計量の際にはリスクは1%,0.1%といったきわめて小さな確率での分位点等を問題にするため,古典的な中心極限定理などは当てはまりが悪かった。この研究では,分布が2次モーメントを持ち,裾野が多項式オーダーで減少するようなファットテイルを持つ場合に中心極限定理の新しい精密化定理を与えた。 (2)株式利益の希薄化を考慮した転換価格修正条項付き転換社債の価格についての研究近年,転換価格修正条項付き転換社債(MSCB,Moving Strike Convertible Bond)が盛んに発行されるようになったが,株式利益の希薄化を考慮した場合の公正価格の問題は論じられてこなかった。本研究では株価過程を所与とせず,ゲーム論の視点を入れてこの問題に対して一つの解を与えた。 (3)古典的なRademacherによる積分の変数変換公式の拡張 積分の変数変換公式で最も条件が一般の場合の結果としてRademacherの結果があるが,条件は必ずしも使いやすいものではなかった。これを現代的な道具で見直し,一般化した。
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