本研究の目的は、多期間リスク尺度に基づくリスク管理という観点からファイナンスの問題を捉え直すことを目的とした研究であった。本年度は最終年度としてこれまでの研究の見直しと同時に以下の研究を行った。 1.まず、多期間リスク尺度を離散時間でCTE(Conditional Tail Expectation)で逐次計ったものが、時間間隔をゼロに近づけたときに極限がどのような形となるかを研究した。 2.また、リスクの計算においては、従来は余り考慮されなかった確率分布の端における挙動を計量的に知る必要があるが、同分布を持つ独立な確率変数の和に関して、分布がファットテールを持つ場合について分布関数の比に対する一様な評価を得た。 3.リスクの計量化においてモデルが定まったとしても実際のリスク量を計算しようとすると、数値解析におけるあらたな問題が発生する。本研究では、特に、拡散過程に関する期待値を高速に求める手法の研究を行った。まず、漸近展開と大偏差原理を組み合わせた計算手法について研究した。また、いわゆる楠岡近似に関連した確率解析に関する基本的な研究を行った。 4.その他、数理ファイナンスに関する研究として非同時に観測されるデータ列からボラティティの相関を計算する研究、転換価格修正条項付きの転換社債の価格付けの研究を行った。
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