研究概要 |
本研究課題にある「平面被覆予想」とは「有限な平面的被覆を持つ連結グラフは射影平面に埋め込み可能であろう」という予想で,研究代表者である根上が1986年に提唱して以来,国内外の位相幾何学的グラフ理論の研究者によって,その解決に向けた研究が続けられてきた。そして,その研究の成果として,K_<1,2,2,2>という非射影平面的グラフが有限な平面的被覆を持たないことがわかれば,平面被覆予想は肯定的に解決されることが知られている。さらに,2005年に米国の研究者であるH.H.Glover氏がK_<1,2,2,2>の有限平面被覆の非存在を示すことに成功した宣言している。しかし,その信憑性に対しては疑いの声も多い。そこで,今年度は,カナダのビクトリアおよび米国のフロリダで行われた国際会議に参加し,Glover氏の証明がどの程度信頼できるものなのかについて調査を行った。その際に行った海外の研究者との協議の結果,Glover氏の証明を否定するものではないが,平面被覆予想を依然として「予想」のままとしておくとの見解に至っている。また,当研究グループが得意とする閉曲面の三角形分割の対角変形の理論と関連させて,K_<1,2,2,2>の有限平面被覆の非存在を示すというアイディアを得ることができた。さらに,昨年来から続けていたT.Tucker氏との共同研究の成果を発展させて,閉曲面に埋め込まれたグラフの識別数に関する理論を構築することができた。特に,閉曲面の三角形分割の再埋蔵構造に関する理論とリンクすることで,固定した曲面上の三角形分割の識別数には上界があることを証明した。その他にも,位相幾何学的グラフ理論における様々な成果を得ている。
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